国民健康保険その2

 国民健康保険法が成立したのは、昭和13年であるが、当時は国民皆保険のための国民健康保険ではなく、健民健兵のためと貧困農村の治安対策の意味合いが強かった。それが、現在のような国民皆保険制度のための国民健康保険が整備されたのは昭和36年からだった。

 国民健康保険の本人負担が大きい理由としては、加入者の医療費が他の保険よりも高額であることと、雇用者負担の制度がないことが大きな理由であると考える。

 雇用者負担がない部分を公費負担で賄っているが、医療費が増大している現代においては、その医療費の抑制が緊喫の課題となっており、人間ドックなどの予防保全への注力と保険者努力支援制度などの制度改正につながっているものと思われる。

国民健康保険

 国民健康保険制度は、日本の皆保険制度を支えているもので、セーフティーネットの役割を果たしている。

 ただ、他の職域保険等に入れなかった人が入る保険制度なので、加入者の平均所得は低くなっている。また、年齢構成も他の保険よりも高いため、一人当たりの医療費が高くなっているため、他の保険よりも厳しい財政運営を強いられている。公費も他の保険よりも多く投入されているが、それでも財政運営は一向に良くならない。

 平成30年から財政運営主体が市町村から都道府県に移ったことにより、市町村格差は以前よりは改善されている。しかし、他の職域保険との差はまだまだ大きい。

 都道府県に財政運営主体が移ってから4年が経ったが、その効果はどの程度なのか。これが現在の最適解なのか。それとも保険制度を一元化する布石なのか。今後の動向に注視していきたい。

泉佐野市 ふるさと納税訴訟

 泉佐野市は、関西国際空港ができる際にした開発事業で多額の負債を背負い込んだため市の財政が悪化したが、ふるさと納税で多額の寄付金を集めたこと等により財政状況が良くなってきている。

 しかし、ふるさと納税のやり方が不適切だということで、ふるさと納税が新制度に切り替わった際に除外され、2019年度の特別交付税を大幅に減額された。この二点について国を相手取り訴訟をしたが、新制度から除外されたことへの裁判では最高裁で勝訴した。特別交付税の減額については、大阪地裁で勝訴したが国が控訴したため、まだ結果が確定していない。

 どのような裁判結果が出るのか注目しているが、個人的には特別交付税を減額しても良いのではないかと考える。これが、普通交付税なら話は変わるが、特別交付税は特別な財政需要がある場合に交付するもので、それに特別な財政収入がある場合にその部分を減額することは理屈としては成り立つような気がする。

 ただ、災害が起きた場合などに減額されたら可哀そうな気もするし、やはり国の恣意的な運用が可能な気もするのでどのような結果が望ましいかというのは、やはり難しい。

地方財政調整制度の歴史について

現在の地方交付税交付金とは、戦前にあった地方配付税と戦後の地方財政平衡交付金の良い所を取った制度と言われている。

 

地方配付税とは、国税所得税法人税・入場税及び遊興飲食税)の一定割合を地方の取り分として、地方の財政を調整することを目的として、地方に配付されるものである。

 

一方、地方財政平衡交付金は標準的な行政経費を積み上げていって、地方の収入では足りない分を国が交付するものとなっている。この制度は戦後のシャウプ勧告によって実現されたもので、理想的な制度と言われていたが、総額を巡って旧自治庁と旧大蔵省が毎年争い疲弊しきっていたため、わずか5年足らずで地方交付税に改正された。

 

この地方財政調整制度の歴史や変遷については、小西砂千夫氏や石原信雄氏の著書を読むと色々なドラマがあって面白く、色々な人の知恵が凝縮されたものであることがよく分かる。

国庫補助金と国庫負担金について

 地方公共団体の財政担当の仕事をしていると補助金と負担金の違いについて嫌でも敏感になってしまう。国と地方の共同責任で行う事務は負担金。国が奨励的に支出するものは補助金という違いがある。

 そして、負担金は補助率を下回ることはないが、補助金は予算がなくなったりすれば補助金は打ち切られてしまう。つまり、義務的に意味合いに違いがある。

 これは地方公共団体の財政担当の仕事をしていると常識的な知識ですが、先日「石原信雄回顧談」を読んでいたところ、総務省はそのことを当然意識しているが、それ以外の省庁はほとんどこの違いについて意識していないという。

 

 そういわれてみると、今まで仕事をしている中で、国の補助金や負担金の名称がその性質と合わないことがよくあることの理由がなぜだか分かった気がした。

調整債について

調整債とは、消費税率引上げ時の税制改正で法人住民税の法人税割の引き下げ等が行われたことで、地方の減収が引き起こされた場合に、地方財政法に基づき、特例の財源手当てとして起債するものである。

 

具体的な発行可能額の算定方法としては

平成26年・28年度税制改正の減収額+平成31年税制改正の減収額-普通交付税による補てん額

 

となっている。

適債性とは

地方公共団体が借金をする時には、目的が基本的には建設改良費であることが求められている。

 

基本的にはお金が足りないからという意味での借金は認められないが、臨時財政対策債や減収補てん債等は特例として起債が認められる。また、緊急浚渫債などは本来維持補修的な意味合いが強く、建設改良費としては認められないものが特例債として起債が求められる。