地方公会計について

 平成28年度決算までに地方公共団体は統一的な基準による財務書類の公表が求められていた。その前にも公会計が行われていたが、簡易的な方法の総務省改定方式や基準モデルなど多種多様モデルが乱立していた状況であった。

 その中で、個人的にとても気になった考え方が税収を収益とみると資本とみるかという点である。東京都モデルは税収を収益とみているためPLに出てくるが、統一的な基準では税収は出資とみているため、NWに出てくる。これは、会計論で考えると市民は外部資本と考えると内部資本と考えるかという点に影響している。つまり、税収を収益と考えることは市民を外部資本と考えることであり、出資と考えるということは市民を内部資本と考えることである。

 この点については、市は市民のものであるという考え方からすると税収を内部資本と考えるほうが自然なように思う。ただ、このようにするとPLは基本的に赤字になるので企業会計の財務書類とは随分と見方を変えないといけない。恐らくそれを意識しているため、公会計ではPLを行政コスト計算書という名前で呼んでいるものと思われる。

 そして、純資産変動計算書の中にある本年度差額という部分が、本来企業会計上はPLで計算している赤字か黒字かを計算する部分となっている。

 このように、地方公会計は企業会計の考え方を取り入れているが、地方公共団体の実態に合うように改変されており、一般企業の財務書類を読める人が見ても直ぐにわかるというものではない。

 個人的には、このようにしっかり考えられた地方公会計の考え方に好意を持っているが、ただ財政診断には向かないという点については、毎年作らなくてはいけない身としては何のために作っているのか分からなくて虚しいと感じている。

 ただ、副産物として作られる固定資産台帳については、公共施設マネジメントや施設の維持管理に役立つものになるので、ここをいかに正確に作れるという仕組みにはしっかり注力したいと考えている。